悪魔の熱情リブレット
「しぶしぶな。回し者になったのは俺様がお嬢ちゃんの風邪を治してやった後だ。まあ、お嬢ちゃんを見張れって命令されただけで、なーんも悪いことはしてないが。あいつもあれ以来、お嬢ちゃんに手出してないだろう?」
「したみたいだぞ?」
突如現れた黒い狼。
「こんにちは、マルコシアス。貴方も来ていたのですね」
サリエルの挨拶を遮って白い悪魔が冷ややかに言った。
「で?『したみたい』って、どういうこと?」
絶対零度の怒りを放つ。
「さっき、俺の席の隣にゴモリーが座っていた」
「だから?」
「そのゴモリーからティアナの魂を感じた。無垢で清らかな人間の魂を」
「なっ、に!?」
驚愕して声もまともに出ない。
「確かなのですか!?」
サリエルの問いにマルコシアスは冷静に頷いた。
「俺は魂に敏感だ。一度、ティアナに会って魂を知っているから間違いない」
「何てこったー!!」
動揺するバシンの隣でオセーが緊張した声で尋ねた。