悪魔の熱情リブレット
右手には血のついた大剣、左手には救出した袋、顔には黒ずんだカラスの仮面。
人間の形をした悪魔。
「僕はアンドラス。契約成立の証拠に君の命と魂をもらうよ」
死を前にして、少女の母は泣いていた。
否、高熱により眼球が熔け出してそう見えただけかもしれない。
それから彼女は、微笑んでいた。
子供の命が救われたからか、はたまた町の人々を殺すために悪魔がやって来たからか。
真実は炎の中で燃えつき、灰と化す。
アンドラスは袋を開き、子供を出してやった。
気絶しているようだが、息はある。
それに目立った火傷も見当たらない。
そういえば、袋もあまり焼けていなかった。
「母親の愛情か。やるね」
軽い称賛を口にしてから、彼は地獄から自分の部下を呼んだ。
無数の悪魔に包囲されるシャッテンブルク。
アンドラスはペロリと舌舐めずりをした。
「さあ、狩りの始まりだ」
この一言を皮切りに、シャッテンブルクの町は地獄と化した。