悪魔の熱情リブレット
いくら気持ち良く感じても現実に引き戻された時、それは吐き気へと変わる。
「私、帰りたい…。アンドラスのところに、帰して…」
この発言がまずかった。
ルシファーは唸るような低い響きで聞き返した。
「帰りたい、だと?」
過去に聞いた真っ黒い声の恐怖が甦る。
「帰さぬぞ!!!!!」
怒声が響いた瞬間、炎の壁がその勢いを増し二人がいるベッドにまで熱を届けた。
「ぁ…こ、わ…ぃ」
――恐い。
ティアナが感じた恐怖。
地獄の王の怒りに触れて恐怖を抱かないなど有り得ない。
(恐いよ…)
舌なめずりをする捕食者。
――タスケテ…
…アンドラス…
言葉にできず、心で呟いた名。
当然、返事は返ってこない。
そう諦めていた時だった。
「ティアナァァーーー!!!!!!」
幻聴ではない。
安心できる彼の声がティアナの魂を揺さ振った。