悪魔の熱情リブレット
何もなかった場所から忽然と姿を現したアンドラス。
後ろにはバシンもいる。
ティアナを求めパンデモニウムから飛び出したアンドラスは、追いかけてきたバシンに呼び止められ瞬間移動でここに到着したのだった。
ルシファーの居住地を知らない彼は、おそらくバシンに声をかけられなかったらこんなに早くティアナのもとに来られなかっただろう。
アンドラスはルシファーに組み敷かれているゴモリーを仮面越しに見つめ、確認するように尋ねた。
「ティアナ…だよね?」
ティアナは頷く代わりにゆっくりとアンドラスに向かって手を伸ばした。
(本当に、アンドラスだ…)
――来て、くれた…
「ア…ンド…ラ、ス…」
弱々しく口から零れる名前。
それで十分だった。
「ティアナ!何で僕以外の悪魔に遊ばれてるのさ!後でお仕置きだからね!」
アンドラスは剣を出現させると、それを片手に無防備なルシファーの背中に迫った。
勢い良く剣を振り上げる。
しかし、その刃は届くことなく突如現れた炎の渦に遮られた。