悪魔の熱情リブレット
全然悪いとは思っていない声にアンドラスが薄く笑う。
未だ心臓は貫かれたまま。
「どうされたい?このままお前の心臓を引きずりだしてやってもいいが?」
「ハッ…お断り、だね…」
アンドラスの唇の端から血が滴る。
そんなことは気にもとめず、彼は握り締めている剣を振り上げてルシファーの首筋にあてがった。
「貴様は、僕の心臓を…掴んで、いる限り…僕から…離れ、られな、い…」
――破壊するなら、これ程絶好なチャンスはないよね?
逆境を好機とみた彼は遠慮なく地獄の王に刃を食い込ませる。
硬直状態に入る白と黒。
互いがわずかにでも動けば、それが引き金となり相手の攻撃を誘うこととなるだろう。
彼らは対峙したまま、その瞬間を待った。
そして――。
「バシン!!!!」
アンドラスの大声で素早くバシンが動いた。
動揺しているティアナを抱え上げベッドから離れる。
予定外の部下の行動に怒りを覚え、バシンに炎をけしかけるルシファー。
バシンはティアナを庇いながら自慢の蛇の尻尾で攻撃を防いだ。