悪魔の熱情リブレット



 その晩、アンドラスは珍しくシャッテンブルクの時計塔の最上階へ訪れた。

一人になりたかったという気持ちもあるが、ティアナと一緒にいづらいというのが本音だ。

(勢いで「好き」とか言ったよね?僕…)

ティアナは気にしていないかもしれないが、どうも落ち着かない。

「くそー。何でこの僕がこんなに悩まなくちゃいけないんだよ…」

夜空を見上げる。

今夜は星が綺麗だ。

教会の方向には青白い満月が出ている。

空を漂う雲はどこにも見当たらず、全ては光と闇のコントラストで彩られている。

「ティアナ…」

「なーに?アンドラス」

独り言に返事が返ってきた。

「え!?ティアナ!?」

振り向けばそこには愛しき少女。

「呼んだ?」

「いや、べつに、深い意味は…」

驚き慌て、少々ズレた返答になってしまった。

「ティアナは、何でここに…」

「本当に今日はお星様きれいだね。シルシルがね、アンドラスがいるから一緒に見ておいでって」

(シルヴェスター…)

引きつった笑みで部下を思い出す。

後でどうしてくれようか。


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