悪魔の熱情リブレット

「アンドラス…ありがとね」

唐突な感謝の言葉にアンドラスは首を傾げた。

「助けてくれて…」

「ああ、そんなの当然…」

「好きって言ってくれて」

一気に表情を固くしたアンドラス。

「私、嬉しかった」

純粋に微笑む少女。

「絶対否定されると思ってたから…」

そして彼女は恥ずかしげに言った。

「私もアンドラスのこと大好きだよ」

可愛らしく笑うティアナ。


しかし――。


この言葉を聞いたアンドラスは、何か違うと思った。



――違う。



(僕が欲しいのは、そんなありきたりの「好き」じゃない…)


「…ティアナは…」

「何?」

純粋な心とは時に残酷だ。

「シルヴェスターのこと、好き?」

「うん」

「大好き?」

「うん。大好き!」

無邪気に答えるティアナを無言で見つめる。


(やっぱり、違う…。ティアナがさっき僕にくれた「好き」はシルヴェスターと同じ…。僕が欲しいものは…そんなものじゃない…)

「僕は…」


――僕が欲しいものは…



「僕はティアナが好きじゃないよ」


< 149 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop