悪魔の熱情リブレット
「アンドラス…ありがとね」
唐突な感謝の言葉にアンドラスは首を傾げた。
「助けてくれて…」
「ああ、そんなの当然…」
「好きって言ってくれて」
一気に表情を固くしたアンドラス。
「私、嬉しかった」
純粋に微笑む少女。
「絶対否定されると思ってたから…」
そして彼女は恥ずかしげに言った。
「私もアンドラスのこと大好きだよ」
可愛らしく笑うティアナ。
しかし――。
この言葉を聞いたアンドラスは、何か違うと思った。
――違う。
(僕が欲しいのは、そんなありきたりの「好き」じゃない…)
「…ティアナは…」
「何?」
純粋な心とは時に残酷だ。
「シルヴェスターのこと、好き?」
「うん」
「大好き?」
「うん。大好き!」
無邪気に答えるティアナを無言で見つめる。
(やっぱり、違う…。ティアナがさっき僕にくれた「好き」はシルヴェスターと同じ…。僕が欲しいものは…そんなものじゃない…)
「僕は…」
――僕が欲しいものは…
「僕はティアナが好きじゃないよ」