悪魔の熱情リブレット
第十幕
地獄から魂の生還を果たして、少し時が流れた。
アンドラスの傷やティアナの火傷はすっかり良くなり、今ではルシファーに繋がる痕跡はなにもない。
いや、この荒れたシャッテンブルクの町自体が地獄の王と結び付くものであろうか。
まあ、暗い過去はさておき、最近ティアナは世に言う「お年頃」になってきた。
それを如実に表す良い例は、シルヴェスターと一緒にお風呂に入らなくなったことだ。
「ていうか、一緒に入ってたの!?僕は知らなかったよ!?」
アンドラスは主張する。
「ティアナ様が一人で髪を洗えないというので、手伝いに」
シルヴェスターの言い訳。
「でも、もう一人で洗えるから大丈夫だよ!今までありがとねシルシル」
他意はないティアナ。
このように、どんどん自立していく少女。
ちょっぴり寂しいシルシルママの気持ちも知らぬまま、入浴の準備をする。
そんな悪魔と少女の日常に舞い込んできたもの。
それが彼らの運命を大きく動かすこととなるのであった。