悪魔の熱情リブレット
きっかけはヴォラクがくれた油絵道具だった。
「ああ~…、本格的に傷んできたかも…」
アンドラスはお気に入りのカラスの仮面を矯めつ眇めつ見ながら、情けない声を上げた。
ここは居間。
ルシファーと戦ってからより一層ボロボロ感が増した仮面をいじりながらティアナの隣に座る。
やけに静かな少女。
何をしているのかというと…。
「うん!できた!」
真剣な表情から笑顔に変わる。
「描けたよ!見て見て!林檎~!」
そう。
彼女は絵を描いていた。
この間遊びにきたヴォラクが「毎日退屈でしょ?」と気をきかせて置いていった品。
それが油絵道具だった。
早速、それらの道具を使って絵を描いてみたティアナ。
しかし、これがなかなか難しい。
「何これ。林檎?何かの血だまりにしか見えないよ?」
失礼なアンドラスの感想にティアナは頬を膨らませた。
「林檎だもん!」
テーブルにモデルとして置いておいた林檎を指差して宣言する。
「はいはい。わかってるよ。ティアナのほっぺみたいに真っ赤で可愛いよね」