悪魔の熱情リブレット
祭壇がある部屋に戻ると、丁度ティアナが祈り終え顔を上げたところだった。
「お待たせ、アンドラス」
近寄ってくる彼女に白い悪魔は尋ねた。
「何を祈ってたの?」
「えーとね、その…良い子になりますって、神様に約束してたの」
気恥ずかしい様子で答える。
「何で?ティアナは悪い子なの?」
この問いに、少女は勢い良く首を横に振った。
「そうじゃなくて、もっと良い子になるから、だから…」
一瞬のためらいの後に紡がれた言葉。
「ママやパパ、町の人達を天国に入れてあげて下さいって」
アンドラスを真っ直ぐ見つめ、微笑する。
「私が良い子でいれば、きっと神様はママ達を助けてくれるって…信じてるの」
ティアナの清らかな信仰心に、アンドラスは焦がれた。
(無条件で神を信じれるティアナが…うらやましい…)
「ルシファーのこと、まだ憎い?」
口に出た話題は少女の心の傷に触れるもの。
ティアナは悲しい表情で視線を逸らした。
「憎いけど…いくら憎んだって、ママ達は帰ってこないから…」
正論だ。
綺麗過ぎる程の。
「じゃあ、僕は?」