悪魔の熱情リブレット
ティアナの涙が落ち着いたところで、彼らは教会の外に出た。
「どこが良いかな?」
絵になる場所を探しながら歩き回る少女に、大人しくくっついていくアンドラス。
庭園に来てみたり、墓地の方へ行ってみたりと色々悩む。
最終的に教会の周りを一周二周して、ようやく「ここ!」という位置を決めた。
「ここ…?」
アンドラスは馬鹿にするつもりではないが、思わず言ってしまった。
「ティアナ、頭大丈夫?」
「大丈夫だもん!ここって言ったらここなの!」
ティアナが選んだ場所は教会の裏口だった。
この教会の裏口には木でつくられた大きなアーチ型の扉があり、そこに彫られている文様はとても見事だ。
植物の文様が扉の縁を飾り、角には天使が浮き彫りにされている。
天使の表情までわかるほどの細かさはティアナのお気に入りだ。
「この扉を描く!良いでしょ?」
「べつに止めはしないよ」
素っ気なく言ってからティアナの隣に佇む。
「ねえ、ティアナ」
「何?あ、アンドラス!あそこにある椅子持ってきて」
暇そうならば悪魔でも使う。
ティアナは墓地の近くに置かれていたベンチを指し示した。
「はいはい…」
絵を描く用意を手伝いながらアンドラスは再び聞いた。