悪魔の熱情リブレット
目立って視界に入る時計塔やこんもりとした山の上にある教会。
それらを取り囲むようにして見える民家の赤い屋根。
「で?感動してるとこ悪いけど、どこまで行きたいの?」
アンドラスはすたすたと歩き、立ち止まって景色を眺めるティアナを追い越した。
「あ、待って!描きたいのはシャッテンブルクなの!だからこの辺にする。これ以上遠くへは行かないよ」
「そう…」
少し安心した様子でティアナに近寄る。
「じゃあ用意するから、手伝ってよティアナ」
「はーい」
元気な返事が木々の間にこだました。
シャッテンブルクの郊外を抜け森の入り口までやって来た彼らは、そこで何事もなく楽しい午後を過ごす。
はずだった。
唐突に胸騒ぎを感じたのはアンドラス。
(何か気配を感じる…)
彼は森の方から近づいてくる存在に神経を集中させた。
(まだかなり離れてるけど…人間が来るね…)
白い悪魔は考える。
(人間なんか壊すの簡単だけど、ティアナの前じゃちょっと…)