悪魔の熱情リブレット
第十一幕
出会いは急だった。
馬から落ちてしまったところを助け起こそうとして近づき、言われた一言。
――天使…
(あの人には私が天使に見えたのかなー?)
いまいち納得いかないティアナ。
(私は悪魔に育てられたけど、天使に見えるの…?)
アンドラスに抱きかかえられながら自問する。
今、ティアナとアンドラスはシャッテンブルクの町中にいる。
問答無用で少女を連れ帰ってきた白い悪魔は自分の失態を恥じた。
(くそ!ある程度逃げられたとしても殺しを見せつけてシャッテンブルクから遠ざけようとしたのに、裏目に出たか…!)
まさかティアナと接触する人間、しかも若い男が現れるとは思いもしなかった。
ティアナだって思春期だ。
ああいった人間の男を見て何とも思わないわけがない。
(僕が言うのもなんだけど、人間にしては整った顔立ちの奴だったからね…。ていうか、醜男だったらこんなに焦ってないし!)
そう、彼は焦っていた。
ティアナが他の男に目移りするのではないかと。
それでもって、人間と暮らしたいと言われてしまった日には町を一つ、二つ焼け野原にする自信が今の彼にはある。