悪魔の熱情リブレット
(何?考え過ぎ?僕だけ重症?)
そっとティアナの表情を窺う。
赤くもないし青くもない。
いつも通りのほえほえ面。
(何か、一瞬でも焦った自分が馬鹿みたいに思えてきた…)
そんな表情のティアナから漏れた言葉にアンドラスは固まった。
「さっき会った男の人、私のこと『天使』って言ったの」
「…は!?ティアナが天使!?」
「面白いよね。私が天使って。そんな発想どっから来たんだろ?」
ころころと笑うティアナだが、アンドラスの心中は笑うどころの騒ぎじゃなかった。
(…ティアナが天使!?確かに純粋さは天使並だけど、絶対奴は外見の可愛さで言ったよね!?)
愛する少女の可愛らしさを理解しあえる相手が人間の若い男だなんて、面白くも何ともない。
むしろ、理解しあえる相手などいらない。
自分だけの少女は自分だけがその美しさを知っていれば十分だ。
家に到着しても、アンドラスは不安と独占欲でティアナを抱きしめたまま放さなかった。
感じた胸騒ぎは鎮まることなく彼の心を掻き乱す。
(やっぱり、外に出すんじゃなかった…)
後の祭りとはこのことだ。