悪魔の熱情リブレット
それから数ヶ月が過ぎた午後のこと。
冷たい雨が降っていたその日、ティアナは一人で絵が飾られた小部屋に閉じこもり絵を描いていた。
(ふ~、難しいな)
描いているのは風景ではない。
(アンドラスの顔、もう少し小さめかな…?)
ティアナの愛しい悪魔。
彼女はアンドラスの肖像画に挑戦していたのだ。
これはアンドラスには内緒である。
完成したら驚かせようと企んでいる。
「でも…目、どうしよう…」
数える程度しか見たことがないから詳しくわからない。
美しく輝く金色ということははっきりと思い出せるのだが、これだけでは絵を描くには不十分な情報だ。
「う~ん、頑張れ私~!思い出せ~!」
唸っていると扉が開く音がした。
「はう!!」
慌てて絵に布を被せるティアナ。
「ティアナ~、何してるのさ。暇なんだけど」
アンドラスの登場に彼女は冷や汗を浮かべ、「これ以上来ないで!」という表情をした。
「何描いてるの?というか、今その絵を隠したでしょ?」