悪魔の熱情リブレット
「か、隠してないよ!」
声が裏返る。
「へぇー」
アンドラスは意地の悪い笑みをつくり、ティアナに近づいた。
「『誰』を描いてたの?」
何でもお見通しという声。
ティアナは焦った。
「べ、べつに…。それに人じゃ…」
「ない」と否定しようとした時、アンドラスの人差し指が彼女の唇に置かれた。
「嘘つき。悪い子だねティアナ。僕は見たよ?一瞬だったけど、人だったことはわかったさ」
ということは『誰か』まではわかっていないということだ。
「もう一度聞くよ?誰を描いてたの?」
答えたくないティアナは下を向く。
そんな態度の少女にアンドラスは嫌みったらしさ全開で言った。
「もしかして、この前の人間?」
侮蔑まじりの声音にビクリとする。
純粋に恐かっただけ。
しかし彼は、その反応を肯定と受け取った。
「ティアナ…」
普段よりも低い声でティアナの耳に囁きかける。
「ダメだよ。人間の男なんかに惚れちゃ…」