悪魔の熱情リブレット
第十二幕
眩しい朝日が彼の濃い茶色の髪を輝かせる。
ライナルトは鎧を身に纏い、腰に剣を下げて家を出た。
手には兜を抱え、馬小屋に向かう。
彼は戦でもないのに武装していた。
理由は一つ。
(シャッテンブルクの悪魔…)
仲間を殺した悪魔の町へ乗り込むこと。
(…天使は、まだ生きているだろうか…)
あの出会いから数年。
なかなか自信がつかず、鍛練ばかり行っていた自分は情けないだろうか。
(天使を探して、連れ帰る!)
それが彼の最大の目的であった。
ライナルトは愛馬に鞍と手綱をつけ跨がると、威勢良く走らせた。
目指すはシャッテンブルク。
(祖父や父から受け継いだ騎士の誇りにかけて、今度は絶対に逃げない!)
彼の家系の男子は代々騎士になり君主のために仕えた。
幼い頃から祖父の武勇伝を聞かされて育ち、父から騎士のための教育を熱心に授かったライナルト。
自分もいずれ、大きな戦に駆り出されることになるだろうと期待していたが、昨今は祖父が活躍した五十年前よりも平穏であるため武勲もあげられない。
もう騎士の世も末か。
そう感じていた頃に発見した新たな敵。
彼は神に祈りながら森を駆け抜けていった。