悪魔の熱情リブレット
「ねえ、ちょっと待って!?何でさ!?」
「どうしましたか…?」
興奮した主の様子にただならぬ予感がした。
「ティアナの気配がないんだよ!!この町から感じられない!!何でっ!!?」
そう言って駆け出したアンドラス。
シルヴェスターも「まさか!?」という表情をして後を追う。
彼らは屋敷に駆け込むと、家中くまなくティアナを探した。
しかし、結果は――。
「どうしていないのさ!!?」
アンドラスは居間のテーブルを叩き割った。
怒りで拳が震える。
「そういえば…」
何か思い当たることがあったのか、シルヴェスターが口を開いた。
「数日前、この町へ侵入しようとした人間がいました」
「どんな奴?」
「甲冑姿の騎士です」
「甲冑姿の、騎士…?」
数年前の森での出来事を思い出し、アンドラスはドキリとした。
「まさか…!」
(あの男が…!?)
信じたくないが、現にティアナが行方不明だ。
「町の外を探してくる!シルヴェスターはここで待機してて。もしかしたら、ティアナが帰ってくるかもしれないから」
「わかりました」
入れ違いを防ぐため部下を置いて町を出る。
微かに残る少女の気を頼りに、彼は追跡を開始した。