悪魔の熱情リブレット
澄み切った青い空の下、多くの人々が今日も広場に集まっている。
石畳の上を走り回る子供達、物売りの少年や花売りの少女。
賭博にはまるごろつきや酔っ払いに、客を騙して高値で物を売り付ける商人達。
ありふれた町の一場面。
しかし、ティアナにはその光景がとても懐かしく感じられた。
当たり前だろう。
シャッテンブルクには彼女以外、人間はいなかったのだから。
「ここが俺の町。どう?シャッテンブルクより広いから、迷わないように気をつけて」
ライナルトは先に馬から飛び降りた。
続いてティアナも抱きかかえて降ろす。
兜を脱いだ彼は、愛馬を引きながら広場の中心へ向かった。
ティアナも後からついていく。
「賑やかだね!」
「ここはいつもこんな感じかな。騒がしいのが名物みたいなもんだからね」
少し歩くとライナルトは立ち止まり、ある建物を指差した。
「あれがこの町の市庁舎だ。その向かい側にあるのが教会」
白い壁に真っ赤な屋根が印象的な市庁舎。
周囲には花壇があり美しい花々が咲き誇る。