悪魔の熱情リブレット

一方、教会は全体的に黒ずんでいて悪魔でも住み着いているのではないかと思われた。

「これ、元は白かったんじゃ…?どうしてこんなに変色してるの?」

「ああ、それは昔…って言っても俺の祖父が若かった頃に戦いで焼かれたんだよ」

二人は教会の方へぶらぶら歩きながら話した。

「オスマンの軍がこの町に攻めてきて、一時占領されたらしいんだ。教会は燃やされたけど焼け焦げただけで、それ以上破壊されなかった」

ライナルトは異教徒に倒れなかった奇跡の教会を見上げる。

「その後、味方の反撃でオスマン軍は追い出され、町は復興したんだ」

「そうなんだ…。じゃあ、この黒い色はこの教会にとって勲章なんだね」

青い瞳を輝かせて微笑む少女。

ライナルトは天使の微笑にうっすら頬を染めた。

二人の間に初々しい恋人同士の雰囲気が漂う。



「おー!ライナルト!お前どこ行ってたんだ!?」

そこへ、甘い空気をぶち壊す人間が現れた。

男性一人に女性二人。

ライナルトの幼なじみだ。


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