悪魔の熱情リブレット
第十四幕
シャッテンブルクの鐘が鳴る。
時刻は午後三時。
シルヴェスターはその重々しい響きに耳を傾けながら、ざわつく心を落ち着けようと深呼吸した。
「主よ…。遅いですね。ティアナ様はまだ見つからないのでしょうか…?」
命令通り待っているが、少女が帰ってくる様子はない。
浮かない表情で彼が再び大きく息を吸い込んだ時だった。
「よっ!聞いたぞ!ベリアルと遊んでたらしいな」
何もない空間からバシンが現れた。
彼お得意の瞬間移動でやって来る。
神出鬼没な悪魔だ。
「ベリアルなんて思い出したくもありません。話題にしないで下さい」
素っ気ない返事にバシンはカラカラと笑った。
「まあ、いいじゃないか!それより、お嬢ちゃんはどこだ?新しい種持ってきたんだが…」
これから育てる植物の種が入った袋をテーブルに置こうとしたバシン。
しかし、できなかった。
「ありゃ?何でテーブル真っ二つ…?」
「主が壊しました。実は、ティアナ様がどこにもいなくて…。今、主が町の外に探しに出ています」