悪魔の熱情リブレット
冷たくなっていく少女の体をきつく抱きしめ、アンドラスは立ち上がった。
「…シャッテンブルクに行く」
「あ、ああ…」
何を言えばいいのかもわからず、情けない声を出すバシン。
それから彼はアンドラスに近寄り移動を開始した。
自分の主が、大切に育てていた少女の亡骸を持ち帰って来た時、シルヴェスターは胸が空洞になった気がした。
「ティ、アナ…様?」
呼んでも目覚めない。
「シルヴェスター、ティアナは…死んだ…」
抑揚のない声でアンドラスが告げる。
「ベッドに運ぶ。血を拭くから、手ぬぐいを持ってきてよ」
シルヴェスターは言われるがままに動いた。
何も、考えられない。
ティアナは自室のベッドに静かに寝かされた。
「主よ、手ぬぐいです」
「ありがと…。悪いけど…出ていってくれないかな…」
心配してついて来たバシンと待機している部下に言う。
「けどな…」
渋るバシンに彼は大声で怒鳴った。
「出ていけよ!!!!」
アンドラスの不安定な精神。
「…わかった。行こう、シルヴェスター」
(今は俺様達の出る幕じゃないな…)
理解力のあるバシンは、シルヴェスターと共に部屋から出ていった。