悪魔の熱情リブレット
第十五幕



 地獄の空はいつもどんよりとしていて薄暗い。

アンドラスはそんな地獄の上空を見上げ、呟いた。

「天国なんて、もう縁がないと思ってたよ」

愛用の剣を握りしめ武者震い。

天への入り口は地獄の空に存在する。

この地獄を覆う暗色の雲を切り裂けば、その先が神と天使が住まう魂の楽園。

アンドラスは仮面をしっかりと被り、空へと飛んだ。

魔力を最大限発揮して宙を駆ける。

遠くから見れば、それは一筋の閃光のように思われただろう。

アンドラスの目前に近づく、天国と地獄を隔てる厚い雲。

「今行くよ!ティアナ」

彼はためらうことなく境界線をぶち抜いた。

激しい反発力が体を襲う。

並の悪魔ではその力に耐え切れず消滅してしまうだろう。

「負けるかっ!!」

険しい表情でアンドラスは吠えた。






「ティアナーーーー!!!!!!!!」






絶叫して、舞い上がる。

裂いた雲の中から勢い良く飛び出した。

視界に映る天の入り口。

「何者だ!!」

天国の門を守護する天使が厳しい声を上げた。


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