悪魔の熱情リブレット
アンドラスは荒くなった呼吸を整えて言った。
「どきなよ…。でないと地獄に引きずり落とすよ?」
門の番をしている天使は甲冑を纏い、威圧感たっぷりだ。
けれどアンドラスにとって見た目の脅威などまやかしに過ぎない。
「貴様こそ地獄に帰るがいい!!」
鎧の天使が剣を抜き突進してくる。
アンドラスも得物を振り上げ戦闘態勢に入った。
刃と刃がぶつかり合い、火花が散る。
神聖なる天の門前で争いを繰り広げる天使と悪魔。
「うっとうしい!!」
アンドラスは渾身の力を振り絞り、自慢の剣で相手を薙ぎ払う。
「ぐっ!」
怯んだ隙を見逃さずに戦闘から離脱。
急いで門に駆け寄り、楽園への道を開ける。
彼の目的は魂の奪還。
天使を切り刻むことではないために、無駄な争いは避けたい。
「待て!」
後ろから先程の天使が追ってくる。
(ちっ!しつこい奴!)
舌打ちしつつ先へ進もうとした時だった。
「ここは通させませんよ」
穏やかだが力強さを含んだ声が響いた。