悪魔の熱情リブレット
「ティアナ様…。自分ももう一度、貴女の笑顔を見たいです」
望んではいけないこと。
頭では理解しているが、心が脳の説教を聞いちゃいない。
シルヴェスターは長椅子に横たわっているティアナの頬に触れた。
「主が、早く戻って来ますよう…貴女も祈って下さいますか…?」
窓から入り込む月の光が死者の顔をいっそう青白く照らし出す。
返って来ない返事を待つように、シルヴェスターは彼女の側で祈りの姿勢をとった。
――誰に祈ればいいのだろう…
無意識に涙が零れ落ちた。
翌日になってもアンドラスはシャッテンブルクに戻って来なかった。
シルヴェスターは心配であっちへふらふら、こっちへふらふら。
「落ち着け、シルヴェスター。アンドラスを信じて待ってれば良いんだ」
様子を見に来たバシンが諭すも、冷静になれず足が勝手に動いてしまう。
「ただ待つだけなど…歯がゆすぎます…」
「俺様も同感だ。…だから、アンドラスが来る前にちょーっとサリエルでも説得してだな?お嬢ちゃんの腐敗をどうにかしようと目論んでるんだが…。のるか?」