悪魔の熱情リブレット
バシンをおいて駆け出す。
「おおい!待てぇサリエル!!」
寒がりな悪魔も慌ててついていく。
極寒の地を出て彼らが行き着いた先は、岩が剥き出しになった荒涼たる大地だった。
「アンドラスの気が…。近くにいます!」
サリエルは辺りを見渡した。
すでに光は消えうせ、目印はない。
バシンも周囲を確認する。
「んあ!あれは…アンドラスかっ!!」
赤黒い岩肌。
そこに映える白い衣。
ゴツゴツとした巨大な岩石に鎖で縛り付けられている破壊の悪魔。
「アンドラス!!!なぜこのような事に!?」
サリエルの声が聞こえたようだ。
アンドラスは緩慢な動きでぐったりとしていた頭を持ち上げ、側に寄ってきたバシン達を認識する。
「バ、シン…サリ…エ、ル…」
小さな声。
普段の彼らしくない弱々しい口調。
「この鎖…天使にやられたのか?」
バシンの厳しい声音にアンドラスは自嘲した。
「こんな鎖…また、すぐに抜け出して…みせるさ…」
ぼろぼろの体に力を入れて、内側から鎖を弾き飛ばそうと試みる。