悪魔の熱情リブレット
「やめろ!無理するな!」
バシンの気遣いも彼の耳には入らない。
「はあああああ!!!」
アンドラスは何十にも巻かれた頑丈な鎖に抗う。
自分の魔力を放出し、岩から逃れようと躍起になった。
「アンドラス…!」
大人しく見守るしかないサリエルとバシン。
「このおおおぉぉーーーー!!!!!」
凄まじい絶叫と共に、あちこち裂傷したアンドラスの体から血が流れ出る。
「ち、ぎれ、ろーーー!!!!!!!!!!!」
バーンという物凄い音が響いた。
次の瞬間、白い悪魔は自由になり真っ直ぐに天を目指して飛び出した。
勢いで外れた仮面がサリエルの足元に転がり落ちる。
「アンドラス…」
仮面を拾い上げ、彼が向かって行った天を仰ぐ。
天使の呪縛を気合いで解いたアンドラス。
全ては――。
「ティアナのため…ですか…」
その時、出し抜けに拍手が聞こえた。
「すごいよね~、アンドラス。敬服しちゃうよ~」
ヴォラクだった。
彼は気配を消して、ずっと近くの岩の上から眺めていたらしい。