悪魔の熱情リブレット
「アンドラスね~、全然屈服しないんだよ。ミカエルに縛り上げられても、何度も何度も脱出しちゃうんだ~」
「何度も…?」
バシンが腕を組んで聞き返す。
「うん。何度も。ボクが知ってる限りでは、今のが六回目かな~」
「六回!?」
口を揃えて驚く悪魔二匹。
「そうだよ~。天に抗うアンドラスは素敵だね。ボクはそこまで大切なものがないから、あんな真似できないや」
ヴォラクは翼を動かしながら呟いた。
手にした仮面を見つめ、サリエルは飛び立った友を思い出す。
(アンドラス…貴方はそんなにも…ティアナのことを…)
天使との戦いは生温いものではない。
そもそも、半端な覚悟では天にも昇れない。
(全ては、愛しい者のため…ですか)
愛する心は、美しく尊いもの。
(貴方も、私と同じ「想い」を、知ってしまったのですね…)
ならば、彼の気の済むまで付き合ってみようではないか。
この悪魔の熱情に。
「バシン。行きましょうか」
突然のお誘いにバシンは素っ頓狂な声を上げた。
「へっ!?どこに!?」
「シャッテンブルクですよ。ティアナの体は可愛らしいままでいて欲しいですからね」
そして、アンドラスの観察を続けると言ったヴォラク以外、シャッテンブルクへ向かったのだった。