悪魔の熱情リブレット
第十六幕
四十四万四千三百九十七。
四十四万四千三百九十八。
四十四万四千三百九十九。
「次で丁度四十四万四千四百になるよ~。頑張って~、アンドラス」
鎖で繋がれた白い悪魔にヴォラクは声援を送った。
ここは魔界。
再びミカエルに負け、岩に縛りつけられたアンドラス。
今から四十四万四千四百回目の鎖破りを試みる予定だ。
ティアナが死んで、かれこれ百年は経っただろうか。
アンドラスはこの百年間、シャッテンブルクに戻ることなく天への攻撃を繰り返していた。
四十四万四千三百九十九回たたきのめされ、それと同じ数だけ鎖を自力で解いた。
彼は諦めなかった。
何百年かかろうともティアナの魂を奪うと心に誓っていた。
「ティ…ア…ナ…」
もう掠れた声しか出ない。
呼吸を乱しながら、体力の限界で石のように重い体を動かそうと必死になる。
そんなアンドラスをヴォラクは助けるでもなく、ただじっと側で見守っていた。
手助けしようかと思った時期もあった。
けれど、気づいた。
――アンドラスはそんなこと望んでないや…