悪魔の熱情リブレット
彼は独りで戦っているのだ。
自分のために。
自分の身勝手な欲望のために。
そこに他者の手助けなど邪魔なだけ。
(とか綺麗事言ってるけど、本音は手を出したらボクまで魔力で弾き飛ばされそうで恐いからなんだよね~)
身の安全は大切だ。
だから応援にとどめる。
「ティア…ナ…」
アンドラスが呻いた。
「うわああああああ!!!!!!!!」
彼の体から赤い光となって魔力が放出されていく。
鎖が飛び散る音と共に獣の如く走り出すアンドラス。
「いってらっしゃい…」
控えめなヴォラクの声は魔界の風に掻き消された。
渦巻く雲の割れ目から飛び出してくる白い悪魔。
ミカエルは自分の軍を引き連れ、今日もアンドラスを待ち構えていた。
「まだ懲りないのか!」
毒づいても解決しない。
こんな事が繰り返し百年近くも続いてるのだ。
そろそろ終わらせなければ自分の役目に支障が出るし、何より天の威厳に関わる。
(簡単に天と地の境界線を越えられると、他の悪魔達に見くびられでもしたら…!)
考えただけでも恐ろしい。