悪魔の熱情リブレット
「どうしたんだ!?」
声をかけても魂が答えるはずがない。
わかっているが、天使になって日が浅いため仕方ない。
慣れない状況で彼も戸惑っているのだ。
「どういう現象なんだ?」
透き通るように白い魂が情熱的な色に輝いては消える。
――ア………ス…
「え?」
微かに聞こえた魂の声。
兜の下、有り得ないという表情で魂を見つめる。
――アン……ス…
風の音や神を賛美する音色に混じって確かに聞こえる切ない呼び声。
――アン…ラス…
もう疑いようがなかった。
――アンドラス…
少女の魂が泣いている。
鎧の天使は美しくも儚い声が落ち着くまで、ずっと側に寄り添っていたのだった。
神が住みし天国の最上階。
そこへ入ることの許された天使長ミカエルは、恭しく頭を垂れて自分の提案を述べた。
「悪魔アンドラスが望む魂の転生を」
そして――。
「その見返りとして、悪魔アンドラスを天使に戻すのが宜しいかと」
ミカエルの考えた策。
それは堕天使を天使に復帰させるという大胆なものだった。