悪魔の熱情リブレット
久々のシャッテンブルク。
アンドラスはティアナを置いていった教会の小部屋に入って驚いた。
てっきり腐っているかと思っていた少女の遺体は、氷の棺の中で当時の姿を保っている。
「サリエルか…?」
シルヴェスターに問い掛けずともわかる。
このような芸当、サリエルしかできない。
「これは…シルヴェスターが持ってきたの…?」
氷の棺の他に部屋に置かれていたもの。
それは沢山の絵だった。
生前ティアナが描いたシャッテンブルクの風景画。
ティアナの遺体はそれらに囲まれた形で安置されている。
「主よ…。一枚だけ、風景画ではないものがありました」
シルヴェスターが、布が被せられた絵を指して言った。
「これって…もしかして、ティアナが見られたくなくて隠したやつ?」
ティアナは例の絵をとっくに描き上げていたが、本人に見せる勇気がなくて隠したままだったのだ。
アンドラスは人間の絵だろうと思い見るのを拒んだが、シルヴェスターに促されてしぶしぶ布を引き下げた。