悪魔の熱情リブレット
そして、意表をつかれた。
「ぼ…く…?」
純潔を想像させる白。
その中で輝きを主張する黄金。
優しい眼差しで微笑みかける絵画の中の悪魔。
「ははっ…。これじゃあ、まるで天使だ…」
ティアナがどんな思いでこれを描いたのか。
なぜ自分には見せなかったのか。
(今なら、わかる気がする…)
アンドラスはその絵を棺に立てかけると、語るように言った。
「ティアナ。僕はずっと、君の側にいるよ。だから、ゆっくりおやすみ…」
氷に阻まれて抱きしめるのはもちろん、口づけることさえもできない。
もどかしい気持ちを心の奥に押しやり、これからのために天使として復帰することをシルヴェスターに告げた。
「だから、シルヴェスター。君は自由にしていいよ。僕がいなくても、独りで生きられるでしょ?」
魔界でもどこでも好きに行っていいと言うアンドラスだが、彼は頷かなかった。
「自分はここにいます。ティアナ様が生まれ変わるというのなら、それをちゃんと見届けるまでこの遺体から離れません。…自分は、ティアナ様の『ママ』ですから…」