悪魔の熱情リブレット
第十七幕
鳥が虚空を舞い、太陽に向かって飛んでいく。
やや肌に冷たい風が木々の葉を揺らし、秋の訪れを告げる。
山間にある小さな村。
村人達は農業や家畜を育てて生活している。
「おばあちゃん!パパのお手伝い終わったの!」
十歳くらいの少女が家の中で糸を紡いでいた祖母に駆け寄った。
彼女が言う「パパのお手伝い」とは家畜である羊の世話のことだ。
外から帰ってきたばかりの少女に、老婆はおっとりと言った。
「お疲れ様ね、アウレリア。じゃあ今度は、年寄りに付き合ってくれないかしら。一人で糸紡ぎは退屈なのよ」
黒髪の少女アウレリアは笑顔で頷いた。
いそいそと祖母の隣に椅子を持ってきて座る。
「ねえねえ、またお話聞かせて!私、おばあちゃんのお話好きなの~」
アウレリアの祖母はこの村や地方に伝わる伝説に詳しかった。
それは鳥肌が立つほど恐ろしいものであったり、摩訶不思議なものであったりと様々だ。
「そうねぇ…なら、村の墓地に眠る吸血鬼(ストリゴイ)の話は…」