悪魔の熱情リブレット
「でもね。そんな活気に溢れた町は、一夜にして廃墟になってしまったわ。…悪魔がやって来たのよ」
「悪魔!?」
話が面白くなってきた。
無意識に身を乗り出すアウレリア。
「悪魔は町の人々を全員殺してしまった。そのおかげで住人が誰もいなくなって、廃墟と化したのよ」
「だから『呪いの町』?」
「いいえ。人間がいなくなった後、どうやら悪魔がそこに住み着いたらしいの。だから『悪魔が出る呪いの町』という噂が広まり、何百年も語り継がれたのよ。私はこの話を自分の祖父から聞いたわ」
アウレリアは「でも…」と首を捻った。
「どうして悪魔は町の人を殺しちゃったんだろう…?」
「さあね…。悪魔だから、かしら?」
器用に手を動かし糸を紡いでいく祖母を眺めながら、彼女は思ったことを口にした。
「悪魔も天使様みたいに優しかったらいいのにね」
「おやおや、また『天使様』のお話?」
老婆は上品に笑う。
「おばあちゃん、天使様は本当にいるの!私には見えるんだもん!真っ白な天使様が私のことを見守ってくれてるのが!」