悪魔の熱情リブレット

ぷくっと頬を膨らませる孫を宥めながら老婆は言った。

「きっとアウレリアがいい子だから、天使様が守ってくれているのよ。感謝なさいな」

「うん!でも…私だけ…?ベルタのことは守ってくれないの…?」

ベルタとはアウレリアの妹だ。

ベルタは現在一歳になったばかり。

お姉さんとして天使の加護がないことを心配する。

「大丈夫よ。ベルタにはベルタの天使様がいるわ。見えていないだけよ」

「そっか、なら良かった」

祖母に天使が見えるわけではない。

しかし、説得力のある口調で語られると不安が和らぐから不思議だ。

アウレリアは何となく妹の顔が見たくなって母親のところに行くことにした。

多分、一緒にいるだろう。

「ちょっとベルタ連れてくるね」

そう言ってから部屋を出る。

「ママは…裏かな…?」

外に行って家の裏手に回り、洗濯をしている母親を発見する。

背中には眠っているベルタを背負っている。

走って母親に近寄る少女。


そんな元気な彼女を優しく見つめる影が一つ。

「ティアナ…」


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