悪魔の熱情リブレット

空の高みからアウレリアを見下ろすアンドラス。

(ティアナの生まれ変わり…。よく似てるな。髪の色は違うけど仕種とか、癖とか…そのまんま、僕の知ってるティアナだ)

彼は愛しくて手を伸ばす。

しかし、いくら求めても叶うことはない。

生前の記憶がないアウレリア。

天使である限り恋をしてはならないアンドラス。

すれ違ったまま交わることのない互いの存在。

(はあ…。天使に戻って僕の心は腑抜けたのかな…?)

今のままで良い。

そう思えるようになった。

ただ健やかに成長するティアナを、昔のように見守ることで満足。

「ティアナ…いや、アウレリアが幸せなら…それで良いよ」

彼女が墓に眠って魂が再び天に昇るその日まで、ずっと寄り添うようにして見守っていく。

難しいことではない。

人の子を監視するのも天使として当然の任務だ。


(ティアナの魂に幸あれ…)


アンドラスはこの時、まだわかっていなかった。

自分がいかに嫉妬深い天使なのかということを。


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