悪魔の熱情リブレット
シルヴェスターはそれら日用品を全て整理して教会まで持ってきていた。
この二百年あまり、彼はそのようなティアナの思い出の品と共に生きていたのだ。
未練がましいと思われるかもしれない。
けれど自分の心に正直でありたい。
シルヴェスターは心の内に隠すことなくティアナとの別れを惜しんでいた。
「あれとは…?」
「あれだよ…あの…ティアナが好きだったシャッテンブルクの地図」
ティアナの絵を飾っていた部屋で発見した詳細な町の地図。
アンドラスはそれを捜しているようだ。
「ああ、それでしたら…こちらです」
奥の方に置かれていた箱の中から古い巻物を取り出す。
「どうぞ」
アンドラスは古びたそれを開き、中の地図を確認した。
「うん、これだね。ちょっと借りてくよ」
「何に使われるのですか?」
「ティアナをおびき出すのに必要なのさ。後、これを見て前世を思い出すかもしれないしね」
アンドラスは一体何をする気なのだろう。
シルヴェスターは主の考えがわからず難しい表情をする。
「じゃあね。近い内にまた来るよ」
天使アンドラスは妖しく微笑み、夜空に向かって羽ばたいた。