悪魔の熱情リブレット
「地図…?」
知らない町の古い地図。
アウレリアはそれを手に取りじっくり眺めた。
(どこかで見たことあるような…?)
気がするだけではっきりとは思い出せない。
彼女は地図の上部に書いてある町の名前を読んだ。
「シャッ、テン、ブルク…?」
――シャッテンブルクにおいで…
夜に聞いたあの言葉。
(偶然…?)
それにしては出来過ぎている。
(やっぱり、夜の出来事は現実で…あの時の人がこの地図を置いていったってこと…?)
彼女は地図を握り締めて言った。
「ママ、今日これから出掛けてくるね」
「あらあら、今日は駄目よ。式に着る衣装の寸法を測るの。あなたにも、いてもらわなくちゃ」
「なら…明日は?」
「明日なら良いけど…。なーに?エーリヒと逢い引き?」
「違うもん!」
からかう母親に膨れてみせたアウレリア。
(…だって、気になるの。あの人、私のことを弄んだのに…すごく優しかった)
慈しむように触れられた。
壊れ物を扱うように抱きしめられた。
一方的に見えて、思いやりが感じられた行為。