悪魔の熱情リブレット
ライナルトはティアナを良く見るために兜を外し、顔を曝した。
滑らかな焦げ茶色の髪、美しい翡翠色の瞳。
アンドラスは目を見張った。
忘れもしない憎き人間の顔。
「貴様はあの時の!!」
ティアナを唆し、連れ去った男。
「へぇ…そうか、そうだったのか…。心が誠実だったり信仰深かったりすると、死んだ後天使になる人間もいるからね…」
アンドラスが言った通り、選ばれた人間は天使となり人間の頃の記憶を消されて神に仕える。
元人間で有名な天使にメタトロンやサンダルフォンなどがいる。
彼らは偉大な預言者であったという噂だ。
「ティアナ…。俺が無理を言わなければ…君は…」
ライナルトの涙と言葉に、アンドラスは驚いた。
「貴様、記憶が戻ったのか!?」
「ああ。俺が誰だったかも…ティアナがどんな子かも…悪魔アンドラスのことも…全て、思い出した」
悲しみを含んだ乾いた声。
「なら、貴様がティアナを僕から奪おうとしたことも思い出したんだろうな!!」