悪魔の熱情リブレット
「…すまなかった。俺が余計な行動しなければ、ティアナはもっと生きていられたのに…」
すんなりと謝るライナルトにアンドラスは拍子抜けした。
「張り合いない奴…。まあ、それで良いけどね。今度は邪魔しないでよ?」
声はしっかりしているが、繊細で頼りない白い悪魔の姿に、ふとライナルトは思い出した真実を告げたくなった。
「ティアナは…お前のことを、愛してた…」
アンドラスがはっと息を呑んだ音が聞こえた。
しかし、すぐにいつもの調子に戻る。
「…当然でしょ?僕達は愛し合ってたんだからね」
「…そうか…なら、いいんだ」
そしてアンドラスに背を向けるライナルト。
「どこ行くのさ?」
「俺は天界に帰る。ここには…いたくない…」
弱気な声に悪魔ははっきりと言った。
「ダメだよ」
ライナルトの肩を掴み、自分の方に体を向かせる。
「貴様も使えるかもしれないから、ここにいてもらう」
「な、に…?」
使えるとは一体何のことなのか。
その疑問に悪魔はすぐ答えてくれた。
「ティアナの記憶を呼び戻すのさ」
役者は揃い、彼らは再びシャッテンブルクに集う。
終幕に向けて生き急ぐ悪魔は、密かに十字架に口づけた。