悪魔の熱情リブレット
第十八幕
ゆっくりと流れていく緑の景色。
馬の蹄の音がのどかな森の道に響く。
今、アウレリアは馬車に乗っている。
馬車と言っても、貴族が乗るような豪華なものではなく、農業用に使う荷車と言った方が正解だ。
「もうすぐ着くぞー」
この荷車の御者である農家のおじさんがアウレリアに声をかけた。
「この森を抜けてすぐだ。そら、見えてきた!」
木々の間から姿を現した町。
「あれが…シャッテンブルク…?」
初めて目にする廃墟の町に、なぜだか彼女は恐怖よりも先に懐かしさを感じた。
「あ~、すまないが…ここで降りてもらえないか?これ以上は近づきたくないんでな」
「あ、はい。ここまでで十分です。ありがとうございました」
アウレリアは丁寧にお辞儀をして荷車から降りる。
「帰りはどうすんだ?」
「一番近い村までなら歩いて行けますから、そこでどうにかします」
シャッテンブルクに行くため村を出て、近隣の町を訪れたアウレリア。
そこでたまたま町へ買い出しに来ていた愛想の良い農夫と会った。
彼にシャッテンブルクのことを話したら、「近くを通るから乗せてってやる」と申し出てくれたのだ。