悪魔の熱情リブレット


 さて、案内された先は大きな屋敷だった。

(はう~!私の家は農家だから、町のおっきな家って入るの初めてだよ!)

「お…お邪魔します…」

廃墟なのだけれど。

わかっているけど言いたかった。

「居間へどうぞ」

サリエルが入って右側を示す。

そこが屋敷の居間であるらしかった。

扉を開けて中を見る。

(あの声の人が、ここに…?)

期待したアウレリアの目に入ってきたのは、箒を持って一生懸命掃除をしている男性の姿だった。

「主よ、どいて下さい。嫌がらせですか?」

箒の先で白い髪の青年を邪魔そうにつつく。

「シルヴェスター、あそこがまだ汚いよ?あっち綺麗にしてから僕をつつきなよ」

(この声!?)

アウレリアの心臓が高鳴った。

「…わかりました」

主に逆らえないシルヴェスター。

箒を片手に「あっち」に向かって移動しようとしたら、アウレリアと目があった。

「貴女が、アウレリア様?」

自分の名前を言い当てられて不思議に思う。

「ティアナが来たの!?シルヴェスター、さっさと掃除を終わらせて!」


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