悪魔の熱情リブレット
「ティアナ、お願い。一度だけキスさせて」
優しく懇願する。
「一度口づけるだけ。それ以上のことはしないし、それが済んだら…帰っていいよ」
――君が生きるべき場所に…
「いきなり…どうして…?」
急な態度の変化に戸惑いを隠せない。
「いいから。一度だけ。ね…?」
彼女はためらっていたが、しぶしぶ承諾した。
「一回だけ、なら…」
「ありがとう」
彼の素直な感謝の言葉に、なぜか胸が苦しくなったアウレリア。
「じゃあ…」
そっと近づくアンドラスに、恥ずかしさからギュッと目をつぶる。
「愛してる…」
頭上から降ってきた甘い声。
そして彼らは暮れ行く太陽に見守られ、唇を重ねた。
それは純粋で神聖な儀式。
眩しい日の光がアンドラスの十字架に反射する。
時が止まったかのような瞬間だった。
一度きりの口づけ。
柔らかな彼女の感触が残る。
アンドラスは自分の唇を指でなぞりながら尋ねた。
「やっぱり、ダメ…?」
「え?」