悪魔の熱情リブレット
何かを思い出したような反応は彼女から見受けられない。
アンドラスは寂しそうに微笑んだ。
「僕の負け、か…」
溜息を吐く彼の心境がわからない。
アウレリアは「負け」とはどういう意味か聞こうとした。
するとアンドラスは木の柵に近寄り、振り返った。
「ティアナ!」
太陽が彼の顔を照らし出す。
「大好きだよ…!」
十字架が煌めいた。
そして、もう一つ輝いたもの。
(あ、れは…)
風の悪戯。
金色に輝く優しい瞳が一瞬だけアウレリアの瞳に映った。
――「僕は悪魔アンドラス。君はあの女の娘だね?」「僕以外に抱きつくな」「ティアナ!!」「ば―か」「ティアナ!?何すんの!?こら!仮面返して!」「逃げるなんて許さない!!」「ティアナ…これ以上…」「知らないよ!あんな女!」「ティアナァァーーー!!!!!!」「好きだから…」「愛してる…」「…全く…悪い子だね。ティアナ」「だって、年寄りって面倒臭そう」「君は僕のもの…」「…ティア、ナ…?」「ティアナーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
金の瞳に魅せられて、復活した魂の記憶。
それは雪崩の如く彼女の心に押し寄せてきた。
「アン、ドラス…!」