悪魔の熱情リブレット
金色を指でなぞる。
「私も…大好きだよ…」
小さな小さな独り言は誰にも聞かれることは無かった。
ライナルトが天へ戻って数時間が経った。
太陽が地平線に隠れた頃、彼らは屋敷に戻り今後について話し合っていた。
「アンドラスが人間になるなら私はシャッテンブルクに残る!」
家族や婚約者を裏切ることになろうとも、アンドラスの最期の言葉に答えてあげたかった。
(エーリヒが待ってるのに…酷い女だって自分でわかってる…!でも、汚い自分になっても…)
――アンドラスと一緒にいたい
生まれ変わった彼を愛してあげたい。
誰よりも。
「待て待て、お嬢ちゃん。アンドラスが人間になったらお嬢ちゃんみたいに記憶を消されて、新しく人生やり直すんだぞ?」
「しかも、いつ生まれ変わるかなど見当がつかない」
バシンやオセーの意見に怯む。
「ティアナ様の時は二百年ほどかかりました」
シルヴェスターのとどめの言葉。
「二百年…」
アウレリアはうなだれた。
そんなに生きられるわけがない。
アンドラスとは違って待つことすらできない自分に腹が立つ。
「どうしよう…。私、どうすれば…!」
戸惑うアウレリアが俯いた時だった。
「私に任せるが良い」