悪魔の熱情リブレット
雲一つない晴天だった。
眩しそうに空を見上げながら、彼は町の小さな酒場に向かう。
町外れにあるその店はいつも常連客で賑わっているが、まだ営業時間ではないのでガラガラだ。
彼は始まっていないことを承知で店に入った。
「カミル!まだ午前中だぞ!?夜に来なさい」
酒場の店主が出て来て青年カミルをたしなめる。
「けち臭いこと言わないでよ、おじさん」
カミルは茶色の髪を掻きあげながらカウンターに近寄った。
店の主人は血の繋がった彼のおじさんだ。
ゆえに態度は馴れ馴れしい。
「いくら親戚だからって、負けないぞ?」
「わかってるさ。代金は払うよ」
カウンターの席に座るカミルにしぶしぶビールを注いでやる。
「全く…飲みすぎ注意だぞ?」
「はいはい。…それよりさ、おじさん。昨日、テレビでニュース見た?」
「ああ、最近乾燥してるから火の元に気をつけろって言ってたな」
「違うよ!『呪いの町』に悪魔が現れたってニュースでやってたでしょ!?」
真剣な表情で聞くから何の話かと思えば。
「全く!若いもんはオカルトが好きだね~」