悪魔の熱情リブレット

「黙ってテレビ見てろって!?僕にはできないよ!恩師が行方不明なのによくあいつらも知らん顔できるよね!」

「あいつら」とは同じ大学の仲間で、共に行方不明の教授に習った学生達のことだ。

彼は一気にビールを飲み干すと、代金をカウンターに置き立ち上がった。

「おい!カミル!?」

すたすたと出口に向かう甥っ子を呼ぶ。

カミルは一瞬立ち止まったが、ちらっと振り返り手を振っただけだった。

「はあ~。どうなっても知らんぞー!」

溜息をつき呆れながら、彼は開店前の準備に勤しんだ。







 シャッテンブルクはカミルの町からそれなりに距離がある。

遠くもないが近くもない。

日帰りで行ける程度と言うのがわかりやすいだろう。

「僕の財布の中身で大丈夫かな?」

電車賃やらなんやらの交通費を確認して駅へ歩く。

日の光が眩しい。

ふと、彼は誰かに見られている気がして立ち止まり、晴天を仰いだ。

「……気のせいか…」

何事もなかったように歩みを再開させる。





「頃合いか…」

そんな彼の後ろから天使は密かにについて来た。




< 295 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop