悪魔の熱情リブレット
「黙ってテレビ見てろって!?僕にはできないよ!恩師が行方不明なのによくあいつらも知らん顔できるよね!」
「あいつら」とは同じ大学の仲間で、共に行方不明の教授に習った学生達のことだ。
彼は一気にビールを飲み干すと、代金をカウンターに置き立ち上がった。
「おい!カミル!?」
すたすたと出口に向かう甥っ子を呼ぶ。
カミルは一瞬立ち止まったが、ちらっと振り返り手を振っただけだった。
「はあ~。どうなっても知らんぞー!」
溜息をつき呆れながら、彼は開店前の準備に勤しんだ。
シャッテンブルクはカミルの町からそれなりに距離がある。
遠くもないが近くもない。
日帰りで行ける程度と言うのがわかりやすいだろう。
「僕の財布の中身で大丈夫かな?」
電車賃やらなんやらの交通費を確認して駅へ歩く。
日の光が眩しい。
ふと、彼は誰かに見られている気がして立ち止まり、晴天を仰いだ。
「……気のせいか…」
何事もなかったように歩みを再開させる。
「頃合いか…」
そんな彼の後ろから天使は密かにについて来た。