悪魔の熱情リブレット
終幕



 拍手が響いた。

舞台は終了し、役者達が一人一人挨拶をする。

しかし、老婆はそれを最後まで見ることなく席を立った。

急いで教会から外に出る。

そして逃げるように帰宅した。



 自宅の玄関を開け、中に入る。

荒くなった息を落ち着かせようとその場で深呼吸した。

「はあ…。ダメね…」

あれはお芝居なのだ。

動揺することなどないとわかっている。

彼女はある程度落ち着いたところで、居間へと歩いた。

明かりをつけ、ハンドバッグを静かにテーブルに置く。

「シャッテンブルク…」

彼女は壁にかけてある古い地図を見つめた。

その地図の上部にはしっかりとした文字で「シャッテンブルク」と書かれている。



「孫に全部話したのね…アンドラス…」



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