悪魔の熱情リブレット
一年が経った。
町から活気が無くなって一年。
悪魔が支配するようになって一年。
そして、少女ティアナがアンドラスと出会って一年。
一年とは人間にとって長いようで短い。
ティアナにとってもそれは当てはまる。
未だに彼女はアンドラスに対して緊張している様子だった。
アンドラスにもそれはよく理解できた。
なぜならば――
「シルシル今日はお歌を歌って~!」
とっても明るい表情でシルシルことシルヴェスターに抱きつくティアナ。
「歌、ですか」
慣れとは恐ろしいもので、この一年、シルシルと呼ばれ続けた彼はもうその呼ばれ方に全く違和感を感じなくなっていた。
仏頂面は相変わらずだが、しっかりティアナのママをやっている。
「歌なら僕が教えてあげようか?」
アンドラスの登場にティアナは身を固くした。
「シルシルがいい…」
小さく呟かれた言葉。
アンドラスはちょっと不機嫌になった。
「何なのティアナ?シルヴェスターは良くて、僕はダメ?」
最近接し方に差が出てきたティアナ。
明らかにアンドラスを避けている。
「主よ、怒らないで下さい。余計に嫌われますよ」
シルヴェスターの忠告は逆効果だったらしい。
アンドラスは怒鳴った。